最終更新日:2017/11/27
腰痛・ギックリ腰を自分で何とかする方法
抑えておくべきギックリ腰の基本知識
ギックリ腰は急性の腰痛。つまりは炎症が激しく起こっているだけ。
魔女の一撃と呼ばれる程の激しい症状をもたらすギックリ腰。ですが腰に起こっている現象は非常にシンプルです。ある意味正常な生理現象が起こっているだけと言えるでしょう。
- ゆっくり蓄積されてきた負担が「小さなキッカケ」で限界を超えた
- 余りに大き過ぎる衝撃に「腰の許容範囲」が一瞬で決壊した
ギックリ腰が起こるのは上記のいずれかの場合です。
前者は振り返った瞬間や立ち上がろうとした瞬間の「グキッ!」で後者の場合は交通事故や咳、クシャミがキッカケとなる「グキッ!」です。
身体は瞬時に防衛態勢に入る。それが固まった腰
ギックリ腰は「腰が据わらない」状態になります。上半身の重みを全く腰が支える事ができなくなってグラグラになるのです。
これは身体が上半身を支える事を放棄しているからに他なりません。
脳は痛めた箇所を守る事を最優先事項に設定し、体重を支える抗重力筋としての役割は後回しにしています。
「腰が据わらない=腰の力が抜けている」と誰もが思いがちですが、実は全く逆で腰の深部筋肉はガチガチに固まっています。全く融通が利かないくらいにインナーマッスルはカチカチです。
完全に柔軟性を犠牲にして、超強力なコルセットを作り上げている状態なのです。
この「強制反射コルセット」を緩めてあげる事がギックリ腰対策となります。
腰椎が歪んでいるのも「強制コルセット」によるもの
ギックリ腰の患者様は異常なまでの側弯を起こします。
- 腰を伸ばせない
- 腰上を支えられない
- 結果的に腰が左右いずれかに傾く
これは強制反射コルセットの影響で腰周辺が固定されたことが原因です。筋肉が完全に固定している為にビクともしません。
脳は意識から完全に独立して腰を守りに入っています。
この状況で無理に動かそうとしても身体は余計に固くなるだけです。正に北風と太陽の旅人の様なもの。
このタイミングで必要なのは腰に安心感を与える事です。そしてそれは自宅で十分に取り組めるものとなります。
という訳で北風と太陽で言うところの「太陽」になりましょう。
優しく対応すればギックリ腰でカチコチになっている腰はその筋肉の鎧を自ら外してくれますよ!
強制反射コルセットは「血流改善」と「安静」で緩む
強制反射コルセットは「血流の改善」と「安静」で緩んでいきます。要は危険信号を取り除いてあげれば勝手に緩んでいくのです。
ただし最短でも2~3日の時間が必要となります。
仕事の都合上、その時間すら待てないという場合は即効性が特徴である施術が最適でしょう。
1週間程度の余裕が作れるのであれば自宅で身体を休める事に集中した方が良いです。ギックリ腰は大体2~3日の安静で6割~7割は回復していきます。
初日の余りの衝撃に長引くような印象を持ってしまいがちですが、炎症が収まって身体が安心したら一気に回復が加速するので大丈夫です。
- 安静:交感神経全開の身体を落ち着かせる
- 血流改善:炎症部位に血液をより多く送る事で回復が早まる
ギックリ腰からの早期回復にはこの2点が重要です。
ギックリ腰が完治しないより「身体が動く様になった」事を大切にしよう
ギックリ腰になった患者様は「100%治ったかどうか」を常に気にするケースが多いです。これはストレスの大きな原因となりますので気持ちを少し切り替えてください。
残っている痛みに拘るよりも、日々改善していく割合が増えている事を喜ぼう
身体は毎日回復していきますので、意識すれば色んな部分で変化が起こっています。その変化を大切にして下さい。
「できる事が増えてきた」
これはギックリ腰において最も価値ある変化です。
急性期は冷やして、慢性期は温めるという王道はどうだろうか
ギックリ腰の王道として以下のルートがあります。
- 急性期:炎症が激しい為に冷やして炎症を抑える
- 慢性期:炎症が治まってきているので温めて血流促進を図る
当院の見解ですが「炎症反応は治癒過程」と受け止めているので特に冷やす必要は無いと思います。冷やせば痛みは治まるでしょうが治癒過程は妨げられます。
とにかくの鎮痛を目的とするのか、治癒過程である炎症を見守るのかは自分自身で選んでください。院長は今はもう冷やしていません。どう考えても不自然な気がするからです。
身体が自力で回復しようとする反応が「炎症反応」です。炎症とは痛みも伴いますが患部に白血球や栄養やらを集める為の「狼煙」のようなもの。
「痛み」は損傷個所を動かさない様にする為の防衛手段です。
身体が求めているのは安静です。身体が治癒に集中できる環境を求めているのです。ならば与えてあげましょう。それが当院が考えるギックリ腰を自分で治療・改善する為の方法論です。
ギックリ腰を自分で何とかする方法
ギックリ腰に関しての基本的な情報は前項で述べた通りです。
ですが実際の患者様が知りたいのは「今、自分はどうすればこの痛みから解放されるのか?」という1点だと思います。
そこでここからは「とにかくギックリ腰の腰痛を何とかしたい、それも自分で」という問いに対する答えを述べていきます。
真っ先にすべき事:【安全地帯の確保】
ギックリ腰は予告なくやってきます。そして殆どの方がその瞬間から「二足歩行」が不可能になります。できたとしても見るも無残なへっぴり腰でのヨタヨタ歩きが精一杯です。
そんな非常事態に襲われる訳ですから頭は大パニックです。特に仕事中や外出中の時はそれこそ冷や汗ものです。普通に背筋が凍り付きます。「嘘だろ!」と。
そんな時に真っ先にすべき事とは「安全地帯の確保」に他なりません。気合や根性でその場を乗り切ろうなんて絶対に思わないようにしてください。ヘルニアや脊柱管狭窄症といった悲劇の幕開けとなり兼ねません。
とにかく「ふぅぅぅ~~~~~」と一息つける場所を探しましょう。
- 公園のベンチ
- 職場の休憩室
- 公衆トイレの身障者用スペース
もう何でもありです。とにかく腰の不安定さをある程度安定させて、落ち着いて物を考えられる状態を作り出しましょう。
自転車等の移動手段を持っていた場合はできるのであれば「自宅」などの絶対的な安全地帯に戻って下さい。自宅に帰ってしまえばこっちのものです。心の余裕が全然違います。自宅なら何とでもなる。
公園などで子育て中にギックリ腰になった場合、何も考えずに保育園や幼稚園に助けを求めましょう。事情を説明して助けてくれない園はまずありません。個人的には「幼稚園」より「保育園」の方をおススメします。保育園は殆どが「赤ちゃんの駅」になっているはずです。勿論、当院に来ても大丈夫です。そのままギックリ腰を施術します(笑
とにかく安全地帯に非難する事。そして気持ちに少し余裕を持たせることです。そこから冷静にギックリ腰への対処が始まります。
2番目にすべき事:【身体の自由度の確認】
身動きが取れない、動いたらもう駄目だ。そんな状態を脱する事ができたら次は「今の自分の確認」です。
- どんな動きをすれば痛みが走るのか
- 痛みの範囲はどの程度か
- 痛みの種類はどんなものか
- 楽な姿勢は何処にあるのか?
今起こっているギックリ腰を冷静に分析してください。「今の自分にできる事」「今の自分にはできない事」が見えてきます。それが区別できる様になったら社会生活におけるギックリ腰の影響度合いが見えてくるはずです。
ギックリ腰はその症状の凄まじさに頭がパニックとなりますが、冷静に分析してしまえば何も怖くはありません。
3番目にすべき事:【後回しできる事・できない事のリスト化】
安全地帯を確保し、自分の身体の自由度についてもある程度把握できた。そうなると「日常の予定」の中で「今の自分にできる事」と「今の自分にはできない事」が見えてきます。
その中で「今の自分にはできない事」を更に「後回しにしても大丈夫な事」と「後回しにできない事」へと分類していきます。ここで生まれた「後回しにしても大丈夫な事」は後回しにしてしまいましょう。ギックリ腰の改善が優先順位は高いです。
問題は「後回しにできない事」です。これは自分の都合ではどうしようもないものなので仕方ありません。
- 消炎鎮痛剤で痛みを抑える
- コルセットで腰を固めて腰の負担を最小限に抑える
- 最短時間で用事を済ませる段取りを組む
等の工夫でもって乗り切りましょう。
4番目にすべき事:【ひたすら安静にする】
ギックリ腰の早期改善で最も効果的な在宅療法が「安静」です。
どうしても後回しにできない用事をこなした後はもう「自分の事を最優先」としましょう。ギックリ腰は本来長引く様な症状ではありません。完治までに多少の時間が掛かったとしても痛みの5割以上は発症から3日間で大体は収まっていきます。
ですので、発症から3日間は基本的には「我儘に過ごす」形で絶対安静にしておきましょう。ここで無理をしたら長引きます。無理をし過ぎたらヘルニアや脊柱管狭窄症などの神経痛症状が顔を出してきます。そうなると本当に長引きますから要注意です。
安静の仕方は「楽な姿勢」で安静にしていれば何でも構いません。代表的な安静姿勢は「エビ」です。横向きで膝を曲げて寝る姿勢は腰への負担を最小限に抑えてくれます。仰向けの場合も膝を曲げて寝るようにしましょう。
番外編:急性期は冷やす、慢性期は温めるについて
繰り返しになりますがこの点についてももう一度。
ギックリ腰の在宅療法で良く言われるのが「急性期は冷やす」で対応し「慢性期は温める」で対応するというもの。院長個人の考えですが「急性期の冷やす」は余り要らないと思います。鎮痛目的なら効果的だと思いますが、自然治癒を促す目的でいうなら逆効果です。
炎症反応は人間のもつ治癒反応そのものですので、それを強制的に冷やして妨げるのは自然治癒を邪魔している事になります。痛みは炎症反応の一環であり、治癒過程の一部なので不快ではありますが身体にとっては「ブレーキ役」としての役割を担っているのです。
ですので、当院では「ギックリ腰急性期の冷却はどうか?」と聞かれた際には「鎮痛目的としては正解、早期治癒を目的とするなら不正解」という返事をしています。ちなみに院長は冷やしません。
一方で慢性期に温めるのは大賛成です。温熱効果で筋肉(骨格筋・血管)を緩めて全身の血流をドンドン促進させましょう。自然治癒とは血液の循環が要です。ですので温熱療法は自然治癒力の促進に大いに役立ちます。