変形性股関節症をはじめとする変形性関節症は恐らく2017年以降も続々と増えていく疾患となるでしょう。腰痛や肩こり同様に社会構造にその原因が潜んでいるからです。
今回はそんな変形性関節症の中でも女性に多いとされてきた変形性股関節症を
最初は誰もが「何となく変」から始まる
変形性股関節症に悩む患者様が感じるのは抽象的な感覚から始まります。最初から「あ、変形性股関節症の症状だ」なんて思う患者様はまずいません。
「あれ、これなんだ?」
これが全ての始まりです。
股関節に感じる最初の違和感
当院に寄せられた脚の付け根(股関節)に関する内容
- 1.脚の付け根に電気が走る
- 2.脚の付け根がピリピリする、ピリピリ痛む
- 3.脚の付け根に違和感を感じる
- 4.脚の付け根に鈍痛を感じる
- 5.脚の付け根に鋭い痛みが走る
- 6.脚の付け根の関節が痛い
- 7.脚の付け根の前側が痛い
- 8.足の付け根の後ろ側が痛い
- 9.番外編:足の付け根の前側、鼠径部にコリコリがある。
これらは全て「股関節の問題」なのですが、患者様はそれが「股関節の問題かどうか」がわかりません。感覚的に「脚の付け根」という表現で問い合わせをされています。
少し長くなりますが、これらの患者様の「感じた違和感」について当院からの返信について簡単に紹介をしたいと思います。
1.脚の付け根に電気が走る
これは院長も経験したことのがある症状です。体重を片足に掛けた瞬間に「ビリビリ!」と足の付け根に電気というより電撃が走ります。
痛い、キューっと締め付けられる、ピーンとくる。
痛みの表現は色々ありますが、とにかく「体重を乗せてられない」状態になるので歩行がとても難しくなります。
2.脚の付け根がピリピリする、ピリピリ痛む
脚の付け根が「ピリピリ」と焼けるような感覚がする。チクチクするような灼熱感を感じる。でもビリビリという電気が走る訳ではない。
痛い!というほどではないけれど確実に「いつもと違う何か」がそこにある。
こんな状況を抱えながら今日も頑張って働く人は大勢います。痛くないから大丈夫かなではなく、そこまで痛くない今なら「簡単に引き返せる」と考えてください。
変形性股関節症は爆発する前なら比較的簡単に引き返すことができるのです。
3.脚の付け根に違和感を感じる
痛い訳ではないけれど、何か違和感を感じる。ビリビリでもピリピリでも無い。これは神経痛では無いと思うけど何か変な感じ。
脚の付け根に異常を感じるという事は十中八九は股関節です。稀にリンパの問題が出てくるケースもありますが、その場合は違和感というより「しこり」という形で出てきます。
もっとこう脚の付け根の深いところにある何か、という場合は股関節です。
4.脚の付け根に鈍痛を感じる
脚の付け根にズキンズキンと鈍痛を感じる。それも心臓の脈と一致した流れで痛みが走る感じがする。このタイプの鈍痛は血流障害によって起こるケースが多いです。
血流が過剰なのか不足しているのかは検査が必要ですが、心臓の脈と鈍痛が一致している時点で神経痛である可能性は低くなります。ただし、歩行に伴って痛みが生じるのかどうかだけはしっかり確認しておきましょう。
歩行の際、特に足を地面に接地させた瞬間に鈍痛が走るようなら少し注意です。歩行動作に特に影響はなく鈍痛が起こっているなら特に心配する事は無いでしょう。暫く様子を見て変化を確認して、症状が変化なし、悪化する場合のみ病院での検査という流れで良いと思います。
脈拍と連動している鈍痛・違和感は安静にして血流を改善する事によって解決する事が多いです。慌てず焦らず、仮説を1つ1つ検証していってください。
5.脚の付け根に鋭い痛みが走る
脚の付け根に突然走る「鋭い」痛み。あるいは「刺す」ような痛み。「響く」様な痛み。それが足の付け根の奥の方から沸き起こる。
それは股関節が過剰に圧迫されている可能性があります。あるいは股関節が亜脱臼の状態にあるかもしれません。
どちらの場合にしても重心位置がかなりズレてしまっているケースが非常に多いです。その場合は重心位置を元の位置に戻すことが手っ取り早い解決策なのですが、まずは「安心」を確保する為にも病院にてレントゲン撮影をされる事をおススメします。
正しい情報と現状認識は「順調な回復」にとってとても大切です。
6.脚の付け根の関節が痛い
脚の付け根の関節が痛い。この場合は痛みの細かい判別を先にした方が良いです。「足の付け根が痛い、足の付け根の関節が痛い」という認識では股関節周辺に何かが起こっているという程度までしか掘り下げる事ができません。
的確な対処法を絞り込むにはもう少し痛みの種類と部位を分類した方が良いです。
- 鋭い痛みなのか、鈍い痛みなのか
- 脈に連動した痛みなのか、特定の条件で起こる痛みなのか
- 痛みの範囲は面で広いか、線で直線的か
- 皮膚に近い表面か、骨に近い奥の方か
- 脚の付け根から見て「前側」か「後ろ側」か
ここまで自分の痛みを分類できれば「血流障害」からくるものなのか「神経圧迫」からくるものなのかは判別がつきます。
※神経圧迫も厳密には血流障害に含まれる可能性もある
脚の付け根の痛みは「痛みをより絞り込む」事によって原因に近付けるものなので、最初は大雑把な感覚だと思いますが、それを少しずつで構いませんので絞り込むようにしてください。
その先にあるのが「自分の痛みの正体とその対処法」です。
7.脚の付け根の前側が痛い
脚の付け根の前側が痛い、という場合は多くが血流障害によるものです。痛みの種類は鈍痛で範囲は面、更には脈に連動して痛みが来ているケースが多くみられます。
また、鼠径リンパ節の炎症のケースも稀にありますので不安な場合は一度内科でリンパ節を見て貰うと良いと思います。
リンパ節炎の場合などは基本的に安静にする事によって回復していきます。
8.脚の付け根の後ろ側が痛い
脚の付け根が痛いという場合は、その痛みは神経系の可能性が高いです。丁度お尻の窪みの中付近に鋭い痛み、点の痛みが走る事が多く、その症状は線となってお尻から太腿裏側へと広がっていくケースが多いです。
後ろ側に走る線状の痛みは「坐骨神経痛」である可能性が高いです。
この場合は「何が坐骨神経痛を起こしているのか」という点について絞り込んでいきましょう。
坐骨神経痛は「坐骨神経に走る神経痛」という言葉に過ぎません。坐骨神経痛の原因は色々なケースがあるので絞り込みが必須なのです。
物凄い大雑把な判断ですが、足の付け根の表面・前側は筋肉や血液循環不良が原因であることが多く、足の付け根から後ろ側、お尻の窪みの中側~後ろ側の場合は神経系統の問題であることが多いです。
9.番外編:足の付け根の前側、鼠径部にコリコリがある。
女性に多いのですが「鼠径部にコリコリしたものがある」「コリコリが時々痛む」といった相談があります。
明らかに鼠径部にコリコリした丸いしこりがある場合、鼠経リンパ節のリンパ腫であるケースが多いです。
コリコリが自然に痛み続けるという事は稀で、触るから痛みが走ったり、時々何かの拍子に「ズキッ」とくることが多いと思います。
女性は悪性リンパ腫を真っ先に心配してしまうようですが、その可能性はそれ程高くはありません。ただ心配する事自体がストレスとなるのでそういう場合は内科で検査を受けると良いと思います。
- リンパ腫
- リンパ節炎
- 心配・不安による痛みの助長
- 脂肪種
可能性と考えられるケースは沢山あります。
1週間程度様子を見て変化が全く見られない場合は病院に行くという形で良いでしょう。これも心配であれば今すぐ行っても構いません。
大事なのは「いつ行くのが最適なのか」というよりも「自分が最も安心できる方法は何か」が一番大切なポイントとなります。