先に追記
腰椎椎間板ヘルニアを適応症とした新薬「コンドリアーゼ」の承認は2016年中達成は断念されています。
なお、アメリカにおいては「第三相」の段階です。
椎間板ヘルニア患者には嬉しい知らせが届いた
時期的にはかなり前のニュースになるのですが、知らない人もまだまだ多いはずですので紹介します。
東京にある生化学工業が腰椎椎間板ヘルニアを適応症とする薬(コンドリアーゼ)の製造販売承認申請を厚生労働省に行っています。
コンドリアーゼという酵素が肝
この薬の効果についてですが、簡単にまとめると以下の通りです。
- コンドリアーゼは酵素名(SI-6603)
- 効果は髄核構成成分のグリコサミノグリカンを特異的に分解する
- 椎間板内に注射をして髄核を分解・縮小させる
- 椎間板内の内腔が広がる=除圧されてヘルニアが戻る
- PLDDの理論を薬物で実践する
つまりは「髄核を溶かす」という感じでしょうか。分解するという事はそういう事だと思います。
臨床結果ではプラセボ群に対して有意な結果が出ている
臨床試験での結果ですが、プラセボ群に対して有意的な結果が示されているそうですが、何だか気になる点もあります。
「52週後まで観察したところ、背部痛など有害事象の発現頻度は実薬群の方が多かったものの、忍容性は良好だったという。」
引用元:http://urx.mobi/GhNN
有害事象の発言はコンドリアーゼを服用した方が多かった?という事だと思います。
ただ、忍容性は良好とのこと。「忍容性」なんて初めて聞いたので調べてみましたら「薬学用語」だそうです。
薬物によって生じることが明白な有害作用(副作用)が、被験者にとってどれだけ耐え得るかの程度を示したもの。医薬品には、多かれ少なかれ、有害作用(副作用)がつきものであるという前提にたって使われる用語である。薬物の服用によって、有害作用(副作用)が発生したとしても被験者が十分耐えられる程度であれば、「忍容性が高い(良い)薬物」となり、逆に耐えられない程のひどい有害作用が発生する場合は、「忍容性が低い薬物」となる。
引用元:http://urx.mobi/GhO1
痛みは出てくるけど「耐えられるレベル」という事だそうです。
ちなみに「有害事象=有害作用」だと思うのですが、副作用は背部痛という事でしょうか。
下肢痛は抑えられるが背部痛が生じる
取り敢えず現状のコンドリアーゼはこういう事みたいです。
- 対象となる下肢痛は抑えられる
- 副作用として耐えられるレベルの背部痛が生じる
身体にメスを入れずに治療が可能な点は椎間板ヘルニア患者にとってとても心強い選択肢が増える事になります。
元ヘルニア患者としても早めの承認を待ちたいところです。
カイロプラクティック的に気になる点
髄核を縮小させた後の椎間板は?
PLDDやMET等、外科的な処置でも真っ先に気になるのはここでした。
髄核を削ったり焼いたりする結果、椎間板の耐久性は著しく落ちるはずです。その程度と術後の「傷ついた椎間板」に対するケアに関してはどうしていく方向なのか。
医学に結構多いのですが「アプローチする部分以外は関知せず」というスタンスの場合、治療は成功しても術後・治療後のQOLが著しく下がるという「本末転倒」が起こる事があります。
- 患者様は「話が違う」
- 医療側は「治療は成功した」
この押し問答を何度見てきた事か。
そもそも民間療法を頼ってこられる患者様の多くはこの押し問答の末に辿り着かれます。
今回のコンドリアーゼは注射針という非常に低侵襲治療となりますが、髄核を特異的に分解するだけで「補修・補強」はなされません。
大切なのは「その後の椎間板のケア」です。
- 「下肢痛は取れたが安定した歩行ができなくなった」
- 「下肢痛は取れたが重たいものを持てなくなった」
- 「生活で制限を受ける事が増えた」
といった事にならない事を願います。