変形性股関節症は変形性膝関節症と同じ様に今後爆発的に増える事が予想される疾患です。
理由は明快で「運動不足」と「肥満傾向」です。この二つが揃えばもう間違いありません。
爆発的に増える事が予想される一方で確実に予防できるのも変形性股関節症の特徴です。
そこで今回はとてもシンプルな予防対策・改善対策を紹介します。
変形性股関節症の改善・予防に必要な事
変形性股関節症を改善させるために必要な事は以下のポイントだけです。他には別に必要ありません。
本当にこれだけです。
でも、これだけの事も今の社会では維持する事が困難になっています。その結果として出てくるのが「変形性股関節症」という訳です。
方法1:1日の中で股関節をしっかり運動させてあげる
これは日常生活の中で無意識に取り組むのは難しいです。股関節を動かす時間を1日数分で良いので取りましょう。
最初は「1日1回は股関節をしっかり使う」という程度で構いません。大切なのはそれを日常化する事です。
歩行やマラソン、水泳といった「全身運動」と呼ばれる運動であっても股関節をしっかり使えている訳ではありません。
しっかり股関節を運動させているのは器械体操の床競技くらいでしょう。
流石にそこまでする必要はありませんが、ある程度しっかり股関節を使う習慣はつけておいてください。
【一番効果的】股関節の動きを理解しておく
皆さん、股関節のストレッチや股関節トレーニングについてはとても詳しく学ばれていますが、肝心の股関節の基本的な動作については余り調べていない様です。
施術対象となる股関節の動きを予め理解する事
これが一番効果的な治療法です。いわゆる患者教育みたいなものですね。
全ての変形性股関節症を対象とした治療法や改善法はこの可動範囲を取り戻す為の運動療法です。
やり方は色々ありますが、要はこの運動をさせているだけなのです。
- 屈曲:120° ※膝を胸につける動き
- 伸展:20° ※膝を伸ばして踵を後方へ伸ばす
- 外転:40°
- 内転:25°
- 内旋:35° ※つま先を内に捻る
- 外旋:45° ※つま先を外に捻る
これが股関節の正常な可動範囲です。見るべき点は二つ。
- 正常な可動範囲を動くかどうか
- 左右の可動範囲に差が無いかどうか
可動範囲が狭くなっている関節は変形性股関節症の予備軍だと考えてください。特に症状が無い状態であれば引き返せるレベルの状態です。
股関節を動かす方法1:坂道を大股で歩く
坂道を歩くだけで股関節の運動範囲は広がります。そこに更に大股で歩くという行動を組み込むとさらに股関節の使用率があがります。
平坦な道を歩くだけ、走るだけでは股関節は十分に運動できていません。1日に数分でも構いませんので必ず股関節をしっかり使ってあげてください。
使うと使わないでは本当に5年後10年後が全然違ってきます。
股関節を動かす方法2:股関節のストレッチをする
股関節のストレッチも非常に効果的です。ストレッチをしている時に伸ばしている筋肉を意図的に収縮させると神経促通効果もしっかり働きますので一石二鳥です。
普段は中々使う事の無い角度までしっかり股関節を伸ばして刺激しましょう。
これも毎日しっかり続ける事で5年後10年後の足腰が全く違ったものになります。
方法2:体重を適正にしておく
変形性股関節症の原因として増えているのが「肥満」です。体重はそのまま膝関節や股関節への負担として圧し掛かります。
よく「〇〇関節は体重の〇倍も負担が掛かっている」という表現がされますが、あれは気にしなくて良いです。数値で見ると物凄い負担になるのですが、人間の身体にはそれに対する力を持っていますので体重の数倍の負荷が掛かっても耐える事ができるのです。
ですが毎日掛かり続けると事情は変わります。
そうなのです。体重は突発的に起こる負荷ではなく毎日掛かり続ける継続的な負荷となって生活に溶け込んでしまうから非常に厄介なのです。
肥満体系がもたらす悪影響は血管内の話だけではありません。関節に対しても毎日の積み重ねによって大きな負担をかけてしまうのです。
方法3:重心位置を正中線周辺にとどめておく
当院で主に行う変形性股関節症の施術がこれにあたります。
正中線上に重心のセットポイントが戻る様にし、左右の股関節・左右の膝関節に体重と重力の負担が分散されるようにするのです。
変形性股関節症に悩む患者様はまず重心が左右いずれかに傾いています。初期の患者様の場合は傾いている方の股関節に違和感や痛みが起こっており、進行している患者様の場合は痛みをかばう為に反対側に重心をズラしているケースが多いです。
痛みの出ている足を庇って歩いている状態です。
どちらにしても重心が片側に偏っている為に股関節や膝関節には徐々にダメージが蓄積されている状態です。この状態は「痛みが有る・無い」に関わらず早急に重心位置の調整を行い股関節を開放するべきだと考えています。
最早、中高年の女性の疾患ではない
変形性股関節症は変形性膝関節症と同じく中高年の女性に多い疾患とされてきました。
今も女性の方が起こりやすいです。それは家庭に入っていると社会に出ている男性に比べて運動量が少ないからだと思います。家事育児は思ったほどの運動量がありません。特に股関節の運動範囲を10とするなら、3~4程度の範囲で軽い運動をしている程度です。
つまり、股関節は少し動かされているものの、求められるレベルには到達していないという事です。
それと同じ状況が社会に出ている男性にも起こっています。
ITが業務で進むにつれてどんどん身体を業務時間中に動かす事が減ってきました。
通勤も車や自転車、公共交通機関が中心ですので殆ど動かす事がありません。社会に出ていても「運動量が無い」状態になりつつあるのです。
その上デスクワークの長時間化により同一姿勢をとる時間が長くなっています。椅子に座る姿勢は股関節に余り良いものではありません。股関節周辺の筋肉もどんどん弱っていきます。
その結果、男性で働き盛りの年齢でも股関節の可動が著しく減少している変形性股関節症の予備軍が増えているのです。
最早変形性股関節症は女性の病気ではなくなっています。今の時代は男女問わず抱えている時代です。