最終更新日:2017/08/03

腰の健康の基本「腹圧回復」に取り組もう

腹圧回復は腰の健康の基本

「腹圧強化」と紹介されるケースが多いのですが、当院はあくまで「抜けた腹圧を取り戻す」という目的から「腹圧回復」という言葉を使っています。

余り厳密に使い分けると複雑になってしまうのですが曖昧な状態で言葉を使ってしまうと本質が抜け落ちてしまうケースが多いので少し細かく使い分けています。

とにかく「腹圧」はこの4つを抑えたら十分!

腹圧の回復・強化には沢山の方法があります。ですので調べれば調べる程に混乱するでしょう。

このページでは「腹圧はこれで十分」というものを厳選して紹介しています。色々な事に取り組むよりもここに掲載されている事を生活の中に溶け込ませた方が健康寿命は確実に伸びます。

それを踏まえた上で継続性の高いものを選びました。

目次

  1. 長息呼吸法で横隔膜と腹横筋をしっかり使う
  2. 腹直筋上部を「クランチ」でしっかり使う
  3. 腹直筋下部を「リバースクランチ」でしっかり使う
  4. 外腹斜筋と内腹斜筋を「ツイストクランチ」でしっかり使う

1.長息呼吸法で腹圧の土台を整える【横隔膜と腹横筋】

腹横筋と横隔膜は腹圧の土台部分に当たると考えてください。

土台部分というとても大切な筋肉なのに最も「意識されていない」のがこの筋肉の特徴です。腹横筋に至っては存在すら知られていないケースも多いです。

  1. 横隔膜は「胸郭の圧=胸圧」を調整する重要な調整弁の筋肉
  2. 腹横筋は肋骨の代わりに腹部を守り腹圧を作り出す重要な筋肉

この二つをしっかり使ってあげる事で「腹圧」の土台部分が完成します。

長足呼吸の方法

別記事:長息呼吸で腹圧を取り戻して腰痛改善!

長息呼吸法の取り組み方はとても簡単です。「ゆっくりしっかり行う深呼吸」だと考えてください。

  1. 肺に残っている空気をしっかり出し切る
  2. 肺に目一杯の空気をいれる
  3. 口先から細く長く息を吐き続ける(目標は60秒~90秒)

これだけです。

ゆっくり息を吐いている時、横隔膜が引き上がり腹横筋がゆっくりと収縮していきます。筋肉を使うというイメージは持たないでください。あくまで呼吸を通して筋肉を使うというイメージです。

息を吐くという行為は「胸圧が高まる=胸郭が収取して狭くなる=腹腔が収縮して狭くなる」という事になりますので勝手に筋肉が運動します。

最初は30秒も辛いと思いますが、60秒が簡単になれば腹圧の土台は十分に整ったと言えるでしょう。

お風呂や就寝前にするのが一番楽

長息呼吸法は腹圧の土台を整える以外にも自律神経の調整にとても優れた健康法です。

ですので、お風呂や就寝前といった副交感神経を優位にしたいタイミングで取り組むのが一番効果的でしょう。

リラックス効果が高いので入眠がスムーズになります。

2.腹直筋上部を「クランチ」でしっかり使う

院長自身は「気持ち的に」この取り組みを否定していたのですが、結局はこの方法が一番効果的だったと自身の経験から思い知りました。

  • 長息呼吸法だけでは駄目でした
  • プランクだけでも駄目でした
  • アームレッグクロスレイズだけでも駄目でした
  • ツイスト・クランチだけでも駄目でした

個人的には一番否定したかった「クランチ」が体幹的には一番効果が高かったです。

クランチの方法

  1. 仰向けに寝る
  2. 膝を軽く曲げる
  3. 両手で両肩を抱っこする(写真の通り)
  4. 30度身体を起こす
  5. 起こした身体をゆっくりと戻す(ここが大事)

これで終わりです。10回1セットとして2~3セットをしてください。それだけで効果は十分に出てきます。

スピードはいりません。回数もいりません。1回1回を大切に取り組んでください。

 

最も抜けやすい腹筋の一つが「腹直筋」

運動生理学を学ぶとすぐに気付きますが、この腹直筋は真っ先に抜けます。ここが「始まりの筋肉」と言っても良いでしょう。

院長個人の経験から言うと「始まりの筋肉」を最後にとっておくと腰の変化は余り実感できませんでした。逆に初めに取り組むとかなりはっきりとした変化が数日で感じられました。

腹圧の漏れが一番大きいのは腹直筋なんですね。

多くの人が挫折するのは「シットアップ」に取り組む為

上イラストの腹筋運動に取り組んで挫折した人はどれ程の数に上るでしょうか。

結論から言いますとこの腹筋運動は腰痛改善としては「やり過ぎ」です。完全に目的が変わっています。

これは「シットアップ」という派生型の腹筋運動で、腹直筋以外の股関節に関連する筋肉まで動員する運動になります。

このシットアップに腰痛患者さんが取り組むと

  1. しんどい
  2. つらい
  3. 楽しくない

となり、全く続きません。何より機能を失っている腰ではここまで上半身を持ち上げるのが辛いですので、痛みをこらえて無理やりするか、反動をつけて無理やり持ち上げるかになります。

完全に「形を真似た別の運動」になってしまうのです。

腰痛改善を目的とした場合は「クランチ」です。「シットアップ」ではありません。

クランチ

純粋に腹直筋(主に上部)を使う腹筋運動です。上半身を持ち上げる角度は30度程度。

それ以上では股関節の筋肉が運動に介入していきます。

少年隊の東山さんがTVで披露していた腹筋がこれです。

これだけで十分です。

シットアップ

こちらは「腹直筋」に加えて「大腰筋」「大腿四頭筋」などを運動に介入させた腹筋運動です。

運動選手が取り組む腹筋運動なので負荷が高いです。腰痛患者が取り組む運動ではありません。

改善後、更に自分自身を高めたい場合に取り組む発展形だと考えてください。

健康寿命を延ばす目的の場合は不要です。シックスパックを目指す場合の運動。

3.腹直筋下腹部を「リバース・クランチ」でしっかり使う

画像引用:http://u0u0.net/F3Js
※写真の重ねと矢印は院長による

腹圧の回復にあたって抜けやすいのが「下腹」の運動です。

腹直筋の運動は「クランチ」で十分という認識が多いようですがそれでは「上腹部」に負荷が集中する為に下腹部が抜け落ちてしまいます。

腹圧が抜けていくのは「下腹部」からです。むしろ上腹部は適度な緊張を保ててているケースの方が多い。

ですのでこの「リバース・クランチ」によってしっかり腹直筋の下腹部を使ってあげましょう。

リバース・クランチのやり方:「寝て足を持ち上げるだけ」

リバースクランチはとても簡単です。

  1. 仰向けに寝る
  2. 膝を曲げる
  3. 膝を持ち上げる(膝裏、太ももに挟み物をするのもあり)
  4. 持ち上げた膝をゆっくりと下す(ここが一番大事)

これで終わりです。クランチより更にゆっくりとしたペースで行ってください。

5回を1セットにして2~3セットもすれば十分です。

クランチ同様にスピードはいりません。回数もいりません。1回1回を大切に取り組んでください。

クランチと組み合わせて効果倍増!

リバースクランチはクランチとセットで初めて活きてきます。

腹直筋は上部だけ使っても駄目ですし、下部だけを使ってもやはり効果は薄いです。ですが上下をしっかり使ってあげると途端に効果が跳ね上がります。

ですので腰痛改善を狙う場合は必ず「クランチ」「リバース・クランチ」はセットで取り組んでください。

4.外腹斜筋と内腹斜筋を「ツイストクランチ」でしっかり使う

腹直筋と腹横筋、横隔膜は使えるようになりました(という前提)。

次に使えるようになるべきは「捻り」の運動で活躍する筋肉「外腹斜筋・内腹斜筋」です。この筋肉は使う機会が余り無い為か、腰痛の無い患者様でも「抜けている」ケースが多いです。

腹直筋と斜筋群は腹横筋を包み込む重要な腹圧筋です。腹直筋だけがしっかり収縮していても左右の外腹斜筋と内腹斜筋が緩んでいると腹圧は左右から抜けていきます。

ですので忘れずにしっかり使えるようになっておきましょう。

ツイスト・クランチ(当院流)のやり方

  1. 仰向けになる
  2. 膝を少し曲げる(やり易い角度でOK)
  3. 両手で両肩を抱っこ
  4. 上半身を30度持ち上げる (ここまでクランチと同じ)
  5. 30度持ち上げた状態で左右いずれかに身体を捻る
  6. 10秒その姿勢をキープする(ここが大事)
  7. 捻った状態でゆっくりと上半身を下す(ここも大事)
  8. 捻りを戻して、また30度起き上がる→捻る→ゆっくり下すのループ

これも5回~10回を1セットにして取り組んでください。1セットでも十分です。

本来のツイスト・クランチは捻りながら持ち上げる形なのですが、それは腰痛改善の方法としては負荷が大きいです。腰痛を悪化させる危険性があります。

腰を使いやすい身体を持ち上げる動作まではクランチと共通で行い、その先で腹直筋から外腹斜筋と内腹斜筋に負荷を移動する方法です。

通常のツイスト・クランチに比べると効果は弱くなりますが、安全性と継続性は遥かに高くなります。

人間の身体は捻りにとても弱いので腹斜筋はとても大切です。

私達人間の身体は捻りの運動に非常に弱い構造をしています。身体の自由度・柔軟性を確保する為に耐久性を犠牲にした形です。

その人間のウィークポイントともいえる「捻りの運動」を支えているのがこの外腹斜筋と内腹斜筋です。振り向きざまに「グキッ」と腰を痛めるのは正にこの斜筋群が機能不全に陥っているからなのです。

日常生活では中々使わないですが、とても重要な筋肉ですのでしっかりと使う習慣をつけてあげてください。

まとめ:とにかく腹圧回復にはこの4つです。

以上、腹圧回復の為に大切な筋肉とその使い方を紹介しました。

探せばまだまだ沢山の方法がありますが、ここで紹介したものは何よりも大切な「基本」です。下手に応用に手を出すよりも基本を突き詰めた方が効果は圧倒的に高いです。

院長自身が何度も痛い目にあって確認しています。

基本の繰り返しに勝る正攻法は存在しません。

今回紹介した方法は「身体1つ」で何処でも誰でも取り組む事ができます。後はどのように生活に溶け込ませていくかです。

腹圧の安定は体幹の安定に繋がる

このページでは余り詳しく書いていませんが「腹圧」と「胸圧」が安定すると「体幹」が安定します。

逆をいえば体幹が安定しない人は「胸圧」と「腹圧」のバランスが崩れているのです。

そして「胸圧」は胸郭という肋骨の鎧が作り出しているのでそこまで落ちる事はまずありません。落ちるとしたら「骨格の鎧」をまとっていない「腹圧」の方なのです。

腹圧を回復させることで体幹の安定も作り出せます。体幹が安定すれば運動時の安定性が一気に上昇します。

腹圧を回復させるという取り組みは実は健康寿命をとても延ばしてくれる手軽な方法なのです。

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